サイドストーリー
夏の終わりに揺れる手と手
「あきら、シャンプー変えた?」
「え?よくわかったね。」
「そりゃ、お前の彼氏だからな。」
夏休みも終わって1週間。
修学旅行での出来事以来、すっかり公認の仲になってしまい、学校の登下校は千本木と一緒が当たり前になってしまった。
千本木は手をつなぐのを強要するけれど、それは僕が許さない。
というか、どうしても慣れない。
なんとか手をつなごうとする千本木の手を払うのが日課のようになってしまっているけど、周りからはじゃれあっているように見えるらしくて、筒井さん達からは「仲いいねぇ。」ってからかわれる始末。
「ったく、一言多いっての。でも、いい香りでしょ。けっこう気に入ってるんだ。」
「お前、昔から身だしなみはけっこうマメにしてたからなぁ。でもその長い髪、手入れも大変だろ?」
「うーん、もう慣れちゃった。桃井さんの髪、しなやかできれいだからちゃんとしてあげないとね。」
そう言いながらもうれしそうに話すあきら。
でも髪だけじゃない。爪も肌もしっかりと手入れしている。男だったらそんなメンドクサイこと、普通できないだろう。それを苦にもせず当たり前のことのようにしているんだから、もともと素質があったんじゃないのか?
「そうか?お前なんかうれしそうだぞ。」
「な、なに言ってんだよ! …でも髪は昔から美羽の髪を三つ編みにしてあげたりしてたから、あまり抵抗がないのかもね。」
「確かにお前、夏休み中も三つ編みだったりアップだったりして、それに合わせていろんな格好してたもんな。」
「そうなんだよ。桃井さん、どんな格好しても似合っちゃうからさぁ。」
なんだ、結局楽しんでるじゃないか。まぁ俺としては嬉しいかぎりだが。
「今度の週末も、椎名さん達と秋物見に行こうって話してたんだ。今年はバープル系が流行りなんだって。千本木、聞いてる?」
「あきら、お前楽しそう。」
「バ、バカ、違う!僕は……。」
千本木に言われて気がついた。
髪だけじゃなくて、椎名さんから教わったフェイスケアも毎日しているし、学校じゃ女子同士で流行りのファッションや美味しいお店の話を当たり前のようにしている。
それって楽しんでる?
僕はもう、普通に女の子なの?
「まぁいいんじゃないか。修学旅行中も話したけど、不本意でもせっかく女の子になったんだから、少しくらいは楽しんでも。」
「…うん。」
「また泣いてぇ。そんなとこまで女の子しなくてもいいだろ。」
「…うん。」
「……お前がこの先どうなっても、俺がいるんだから心配するな!」
その強い口調に驚いて顔をあげると、千本木の優しさに満ちた眼差しが朝日と重なって眩しい…。
「……はい。あっ!」
「学校遅れる!!」
千本木は僕の左手を強く握ると、学校に向かって足早に歩きはじめた。
…何故だろう。
いつもなら千本木の手を振りほどこうと必死になるのに、今日はそんな気にならない。それどころか、今はこのまま千本木の手の温もりを感じていたい…。
僕の中の何かが変わり始めている?
「千本木、手、痛い…。」
「あっ、わりぃ。」
千本木は握っていた手を慌てて離した。
「は、離さなくてもいいから。」
千本木の驚いた顔。
僕の手を取り、優しくそしてしっかり握ると、向きを変えて学校に向かって歩き出す。僕は手を引かれながら一歩後ろをついて行く。
千本木の顔は見えないけれど、絶対ふにゃふにゃしてるにきまってる。
「あーっ、菜々子ちゃん、今日は手をつないでるんだー!」
椎名さん!
「千本木君、ついに菜々子ちゃんを攻略したんだね。」
「大変でした!」
なに言ってんだ!
でも、ほんの少しうれしく思っていたりする自分が信じられない。
明日も明後日もこの気持ちが続くのかな。
…続くといいな。
突然後ろから強烈な視線を感じて振り向くと…
めらめらと燃え上がる桃井さんだった……。
うわーーん(泣)
なんなんだ、このラストは。。
ラブラブな二人を描きたいなんて思って、先々週の3連休中に仕上げる予定が今日になっちゃいました。
前半はすらすらと書けたんだけど、後半がなかなか進まなくて、しかも4人を登場させたいとかギャグをとか、 そもそもサイドストーリーはギャグを入れるなんてルールを作っちゃったから、よけいに変になっちゃうんだよ。。。
にしても、あきらは完全に乙女化しちゃってますね(^^; まぁそれを描きたかったんだからいいか(^^;;
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