サイドストーリー

「髪のリボンもよし。あとはコレをつけてと。」
いつもと同じ朝なのに、今日は今までとはちょっと違う。
クリーニングに出してしわのないおろしたての制服。

10月に入って冬服への衣替え。
夏の猛暑の影響が残り、この季節になっても冬服はまだちょっと辛い。
でもしっかりと着ないと、このネックレスが目立たないし。
どうせあいつ、またじろじろ見るんだろうな…。

「おじーさん、行ってきまーす！」
家を出ると、そこにはいつものように千本木が待っていた。
「お早う」
軽く声を掛けると、やっぱり見慣れない冬服を見回しながら答える。
「お早う！」
ったく、なにがうれしくてふにゃふにゃしてるんだか。
半ばあきれながら、先に学校に向かって歩きだす。
やっぱりまだ暑い。
日差しをさえぎるように手をかざすと、後ろから追いかけてきて横に並ぶ。
すると背の高い千本木の影に入って、ほんの少し落ち着いた。
「後ろ姿もかわいいな。」
「…バカ。」

特に話すこともなく、いつもと同じように学校に向かう。
学校に近づき、まだ慣れない冬服姿の友達と挨拶を交わす。
そんな中、校門の前を歩く二人組が目に入った。
「椎名ー、お早う！」
「あっ、菜々子ちゃん。お早う。」
椎名の横に並ぶと、残った二人はおいて話し始める。
「いくら衣替えだからって、冬服はまだ早いよねぇ。」
「だよね。しかも菜々子ちゃん髪も長いし、大変でしょ。」
「うーん、でももう慣れちゃってるから。大きな日よけもいるし。」
後ろに目線を送ると、クスクス笑う椎名。

「あっ、ねぇねぇ、あたしケータイ買い替えたんだ。」
「えー、いいなぁ。なんかすごい機能付いたの？」
「うん、最新のカメラなの。菜々子ちゃん撮ってあげる。」
少し距離を置いてケータイのレンズをこちらに向ける。
「はい。笑ってー！」
「う、うん。」
《カシャ》
「菜々子ちゃん、表情かたいよぉ。」
二人で写真の写りを見ていると、後ろから覗き込んでいた千本木が
「椎名さん、もう一枚いい？」
そう言い終わらないうちに、肩に手をまわして横に立った。
「もちろん！」
そう返事すると、椎名はカメラを構える。
「もう…。」
軽く千本木を睨みつけても知らんぷり。
それどころか、いつにもましてへにょへにょしている。
「菜々子ちゃん、幸せそうだね！」
その言葉に驚いてカメラの方を向くと
《カシャ》
「やっぱり菜々子ちゃん、千本木君と一緒だといい顔するよね。」
「そ、そんなこと…。」
「椎名さん、ごめん。もう一枚撮ってくれる？」
「はーい。」
椎名がカメラを構えると、また肩に手を置いてそっと耳元で囁いた。
「なぁあきら、まだ暑いから、学校の帰りにアイス食べようか？」
「え？ うん。いいね。」
「ほら、前向いて。」
《カシャ》
「あっ！」

「なにこれ……。」

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いつもとなにも変わらない。
でも、ただひとつ今日から制服が変わりました。
そんな秋の衣替えの初日は、余計に暑苦しい写真から始まりました……。

ゆささんにこのイラストのSSを無茶振りした手前、私も描かないとなぁと思い描き始めたものの。。。
今スランプ中でなかなか進まず半分あきらめていたんですが、なんとか仕上げることができました。
ある意味、リハビリになったかなぁと思います。今描いているモノも続きを描かなくっちゃね☆