二次創作小説

第2話 中学3年の夏

投稿:もえじろ:2008年7月30日

修学旅行の帰りのバスの中。
バスの最後部の席であきらは俺にもたれて眠っている。
こいつ、出かけた帰りはいつも俺にもたれて寝てるんだよな。

第1話からの千本木の回想シーンの続きです。
でもこの第2話が先で、第1話の公開は未定です。。

中学3年の夏。
俺は一人残って、バスケの練習をしている。

「あきら、お前見てるだけで飽きない?」
「え、なんで?千本木が一生懸命バスケの練習してる姿、かっこいいから全然飽きないよ。」
こいつ、ときどき何考えてるかわからないな。俺に気があるのか?

「あきらー!」
俺はバスケットボールをあきらに向かって放った。
「わっ!」
「見てるだけじゃなくて、お前もやってみろよ。」
「えー。うん…。」
あきらは不安そうな表情のまま、その場で軽くボールを突きだした。
俺は知っている。本当は運動神経が抜群だってことを。ただ、気が弱いからそれがわからないだけなんだ。
「あきら、俺を抜いてゴールを決められるか?」
「千本木を相手に?…できるわけないじゃん。」
そういうくせに、ボールはしっかり突いてるじゃないか。
「なんだお前、身長が俺と同じになっても、結局俺の後ろをついてくるのか?」
わざとさげすんだ口調であきらを挑発する。
「男のくせに女みたいだな。あきら。」
おっ、目つきが変わったな。
「悔しかったら、俺を抜いてゴール決めてみろよ!」
「……いくよ!」
いつも温厚な表情のあきらが、めずらしく闘志をむき出しにしている。こんな姿見たことがない。

体育の授業でしかバスケなんてやっていないはずなのに、その正確なドリブル。
カゴの位置と自分の立ち位置を確認してタイミングを測っているのか。
身を低くしてボールを突くリズムがわずかに早まると、一気に走り出した。
スピードを落とさずにそのまま俺に向かって突っ込んでくる。
体がわずかに左に傾いた。こっちから抜くのか!
俺はすぐにブロック体制に入った。
何っ?!
体の方向とは反対にボールを突くと、瞬間的に右に切り返して、あっという間に俺を抜いていった。
俺はあきらを追おうとすぐに体を返したが、すでにリング下にいてシュート体制に。
…こいつ、レイアップまでできるのか!
ただ、ボールはわずかにずれてリングを2度バウンドして横にこぼれた。

「はぁはぁ、…やっぱり見てるだけじゃ無理だねぇ。」
軽く息を切らしながらあっけらかんと笑う。
見てるだけでここまでできるわけないだろ。
「お前、ちょっと練習すればすぐにレギュラーになれるぞ!」
「…僕がこういう球技、苦手なの知ってるくせに。」

昔から、やらせればなんでも人一倍こなすくせに、その性格が災いしてまわりからはあまり評価されなかったお前。
それが今、この姿とその優しい性格で、誰からも愛される。
お前は今の方が幸せだと思う。
お前は嫌がっているが、それを気づかせるのが俺の役目なんだろう。

姿は変わっても、昔から変わらない安心しきった表情で俺にもたれるあきら。
その細い肩を抱き寄せ、俺も眠りに落ちた。

「菜々子ちゃん起きないの?」
「う〜ん、椎名さんたち先に降りててくれる?」
「うん。じゃぁ先に行ってるね。」

「おいあきら、いつまで寝てるんだ!」
「……」
ったく。それじゃぁ…。
俺はあきらの顔を上に向けると、唇を合わせた。
「ゥン…バ、バカ!!みんなのいるところでなにやってるんだよ!」
一瞬で目を覚ますと顔をまっ赤にして怒鳴る。
「周り見てみろ。」
「え?」
「学校に着いて、みんなもう降りてるよ。」
「だ、だからって、キ、キスしなくたっていいだろ!」
「眠り姫を起こすには、王子様の熱いキスだろ。どうしても起きないお前がワルイ。」
「く〜〜〜。」
怒りと恥ずかしさが入り交じって下を向く。
「ほら、降りるぞ。荷物持ってやるからよこせ!」
「い、いいよ。自分で持ってくから。」
そういうあきらの手から紙の手提げ袋を取り上げ、バスを降りる。

「あ、菜々子ちゃん、…どうしたの?顔赤いよ?」
「な、なんでもない…。」
「そう?千本木君、なにニコニコしてるの?」

僕、これからどうなるんだろう。
桃井さんもコワイけど、千本木もコワイ…。

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